RubyWorld Conference 2017 開催趣意書

第9回目のRubyWorld Conferenceが開催されます。広がるRubyの生態系を実感していただければと思います。

Rubyの開発が始まってからおおよそ25年が過ぎました。技術者のおもちゃのようなものと考えられていたRubyも長年の発展の末に、エンタープライズ領域でも活用される「本格的」なテクノロジーとみなされるようになりました。事実、数多くのグローバルシステムがRubyで構築され、数多くの人々の生活がなんらかの形でRubyによる影響を受けています。四半世紀の間にRubyはすっかり「成熟した」テクノロジーとなったのです。

どんなテクノロジーでも、登場直後で新進気鋭とみなされている間は、既存の技術の閉塞感を打破するための変化がプラスと考えられ、変化のゆえに受け入れられるのですが、より多くのユーザーに受け入れられ、成熟してくると、テクノロジーに関連する資産が増加するにつれ、ユーザーの多くが安定を求め、変化を嫌う傾向がでてきます。しかし、それに従い、テクノロジーの変化を止めてしまうと、今度はテクノロジーをとりまく環境の変化に取り残され、ユーザーたちには閉塞感が生まれます。そして、その閉塞感は新しいテクノロジーの台頭の原動力となり、変化を止めたテクノロジーは過去のものとして、廃れてしまうことが過去にも度々起きています。

Rubyは今、その分水嶺にいると思います。以前のような閉塞感を打破する変化を求める人は少なくなり、ビジネスの安定的な運用のためにも変化しないでほしいと求める人の声が大きくなっているのを感じます。一方で、クラウドやマルチコア、機械学習など新しいトレンドがRubyをとりまく環境を変化させており、このままなにもしないでいると取り残される危険性も同時に感じています。

恐らくは必要なのはバランスなのだと思います。過去の資産をムダにしない程度の安定性と、周囲の技術やトレンドの進歩に取り残されない程度の変化。これをバランス良く同時に達成させるのは、非常に困難ですが、不可能ではないと思います。Rubyコミュニティは今、Rubyそのものを開発するコア開発者から、フレームワーク、アプリケーション開発者に至るまで、この難しい舵取りを求められる時期に突入しています。

今年のRubyWorld Conferenceは、安定性を視野に入れつつ、変化も許容する、現実世界に根ざした開発スタイルについて考えたいと思います。変化と安定のバランス。それは繁栄しつつも永続を目指す唯一の方法だと思われるからです。

RubyWorld Conference 開催実行委員会
委員長 まつもと ゆきひろ

過去の開催趣意書